HOME EEM-FDM

準静電界の基本特性

解析対象の大きさが波長に比べて十分小さい領域を準静電界と呼びます。
このとき、波動の性質が失われ、静電界と似た特性を示します。
FDTD法(時間領域差分法)では低周波数では必要なタイムステップ数が周波数に反比例し、 計算時間が増えますが、EEM-FDMの周波数領域差分法を用いると、 周波数にほぼ無関係に電磁界を計算することができます。

Z方向を向いた長さl、電流Iの電気ダイポールの電気モーメントは式(1)となり、 この放射する電磁界は式(2)-(4)となります。 準静電界(kr << 1)では、右辺第一項が支配的になり、 電界と磁界の絶対値は式(5)(6)となります。

Z面内の面積S、電流Iの電流ループの磁気モーメントは式(7)となり、 この放射する電磁界は式(8)-(10)となります。 準静電界(kr << 1)では、電界と磁界の絶対値は式(11)(12)となります。

式(5)(6)(11)(12)より、(電気モーメント、誘電率、電界)と(磁気モーメント、透磁率、磁界) を交換すると同じ式になることがわかります。

従って、以下では電気ダイポールについて考えます(式(5)(6))。

距離依存性
電界は距離の3乗、磁界は距離の2乗に反比例します。
方向依存性
電界は軸方向(θ=0度)で最大になり、垂直な方向(θ=90度)での最小値の2倍になります。
磁界は軸に垂直な方向(θ=90度)で最大になり、軸方向(θ=0度)で0になります。
周波数依存性
電界は周波数に無関係で、磁界は周波数に比例します。(電気モーメント一定の場合)
媒質依存性
電界は誘電率に反比例し、磁界は誘電率に無関係です。

図2、図3に電気ダイポールの電界分布と磁界分布を示します。

計算条件は以下の通りです。
・計算領域の大きさ:200mm X 200mm X 200m
・セルサイズ:5mm
・周波数:10MHz (波長30m)
・波源:中心にZ方向に長さ20mmのダイポールを置き、1Vを印加する。

計算上の注意点は以下の通りです。
・計算方法には周波数領域差分法を用いる
・E法とEH法の優劣は不明だが、とりあえずE法を選択する。
・電磁界は波源から離れると急速に減衰し、収束状況が高周波と異なるので、 [収束判定条件]には0を代入し、結果を見ながら十分大きな[最大ステップ数] (=共役勾配法の反復回数)を代入する。
・磁界は電界の空間微分により計算するため、磁界を精度よく計算するには、 [最大ステップ数]に大きめの数値を代入することが必要。
・本ケースでは電界を正しく計算するには1000ステップ、 磁界まで正しく計算するには2000ステップ必要です。

図2、図3から上で述べた方向依存性が確認できます。
周辺の電磁界が波打つのは吸収境界条件の誤差のためです。

入力データ

図2 電気ダイポールの電界分布(XZ面)
図3 電気ダイポールの磁界分布(XZ面)
図4、図5に電気ダイポールの電界分布と磁界分布を示します。
上で述べた距離依存性の通り、電界は距離が2倍になると20log10(2^3)=18dB減衰し、 磁界は距離が2倍になると20log10(2^2)=12dB減衰することが確認できます。


図4 電気ダイポールの電界分布(X軸上)

図5 電気ダイポールの磁界分布(X軸上)
図6、図7に電気ダイポールの近くに比誘電率=4の誘電体(大きさ=50mm X 100mm X 100mm) を置いたときの電界分布と磁界分布を示します。
異なる媒質の境界では、電磁界の境界条件のために電磁界分布が変化することがわかります。
入力データ


図6 誘電体を置いたときの電界分布(XZ面)

図7 誘電体を置いたときの磁界分布(XZ面)
図8、図9に電気ダイポールの近くに完全導体板(大きさ=100mm X 100mm) を置いたときの電界分布と磁界分布を示します。
同じく電磁界分布が変化することがわかります。
入力データ


図8 完全導体を置いたときの電界分布(XZ面)

図9 完全導体を置いたときの磁界分布(XZ面)