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同軸線路の解析解

同軸線路については電磁界分布、特性インピーダンスともに簡単な解析解がありますが、 ここではそれらをEEM-FDMで再現してみます。
図1が計算モデルで、外導体、誘電体、内導体の順に円柱を入力します。
外導体の内径D=4.8mm、内導体の外径d=1.4mm、誘電体の比誘電率εr=2.2とします(5D-2V)。
セル数はNx=Ny=52,Nz=150、セルサイズはΔx=Δy=Δz=0.1mmとします。

同軸線路の基本モードはTEM波であり、 電界はr成分、磁界はφ成分のみを持ちます。
Er(r) = (V / ln(D/d)) * (1/r) (V:電位差) (1)
Hφ(r) = Er(r) * √εr / (120π) (2)
特性インピーダンスZは以下のようになります。
Z = (60 / √εr) * ln(D/d) = (60 / √2.2) * ln(4.8/1.4) = 49.8[Ω] (3)

線路内に仮想給電点を入力し基本モードを励振します。 TEM波を考慮し、図1、図2のように4個の給電点を入力します。 +X方向と-X方向、+Y方向と-Y方向は互いに反対方向を向きますので、 振幅の符号を反転するか、位相を180度ずらします。
線路の両端を解析領域の境界と一致させ、吸収境界条件にMurを設定します。 TEM波は境界に垂直入射しますのでMurで十分な精度が得られます。

図3が時間領域(正弦波)の収束状況です(周波数3GHz)。
本モデルではセルサイズ(=0.1mm)が波長(=100mm)の1/1000であり非常に小さいために、 時間ステップ数30000でも収束が不十分であり、 図4のように電界分布について同心円からの誤差が見られます。 (時間領域ではセルサイズ〜波長/10が基本です)
なお、観測面は給電点から十分(5mm)離れた面であり、 基本モードのみが伝搬していると考えられます。

図5が周波数領域の収束状況です。
少ない反復回数で収束することがわかります。 なお、収束が速すぎるときは、収束判定条件を0とし、反復回数で制御した方が確実です。 振動しながら十分収束させることが大切で、その間に電磁界分布の精度が向上します。
図6のように電界分布は同心円状になります。
なお、内外導体表面では曲面をXYZ座標でモデル化しているために電界に不連続が見られますが、 全体の特性を見るには問題ありません。 より精度よく計算するにはセルサイズを小さくすることが有効です。

以上から、本モデルでは周波数領域の方が適していますので、以後はそれを用います。

図7、図8は周波数1GHz,5GHzでの電界分布です。 TEMモードは周波数特性を持たないことが確認できます。
図9は磁界分布です。式(2)の通り、電界と同じ分布になることが確認できます。

図10は線路を横断した線分上での電磁界分布です。 式(1)(2)の通り、中心からの距離に反比例することがわかります。

線路の特性インピーダンスは、Z = V / I から計算されます。
ここで、Vは内導体と外導体の電位差、 Iは内導体または外導体を流れる全電流(絶対値が同じで符号が反対)です。
電位差は図11の電圧分布図より、
V = 7.262e-4 [V] (4)
となります。
電流については、軸対称性を利用して、 アンペアの法則から適当な点(x=1.6mm,Y=0mm)の磁界から次式で計算します。
I = 2πr Hφ = 2π * 1.6e-3 * 5.5338e-1/(120π) = 1.477e-5 [A] (5)
以上から、
Z = V / I = 7.262e-4 / 1.477e-5 = 49.2 [Ω] (6)
となり、式(3)に近い値になります。

以上から、EEM-FDMにより、同軸線路の解析解が再現できることがわかります。
◆入力データ: 時間領域周波数領域 (右クリック+保存)


図1 計算モデル(外導体、誘電体、内導体、4給電点)

図2 給電点編集ウィンドウ

図3 時間領域の収束状況(3GHz)

図4 電界分布図(3GHz,Z=5mm面,時間領域)

図5 周波数領域の収束状況(3GHz)

図6 電界分布図(3GHz,Z=5mm面,周波数領域)

図7 電界分布図(1GHz,Z=5mm面,周波数領域)

図8 電界分布図(5GHz,Z=5mm面,周波数領域)

図9 磁界分布図(3GHz,Z=5mm面,周波数領域)

図10 線分上の電磁界分布図(赤:Ex,緑:Hy,X方向,Y=0mm,Z=5mm,周波数領域,3GHz)

図11 線分上の電圧分布図(黒:電圧,X方向,Y=0mm,Z=5mm,周波数領域,3GHz)