8.2 マルチループ付き逆Lアンテナ

逆Lアンテナの上に同心の複数個のループを置いて複数の周波数で共振するアンテナを考えます。([9] Chapter5)
本アンテナの動作原理を"Nakano coupling"(中野カップリング)と呼びます。
本ケースはデータ作成ライブラリを使用しています。

(1) 離散マルチループ型

図1はループ数=3のときのアンテナ形状です。
本アンテナの入力インピーダンスは逆Lアンテナの形状によって大きく変わります。
逆Lアンテナの全長=LV(垂直部の長さ)+LH(水平部の長さ)
一番外側のループ長C1=1.19λ3 と一番内側のループ長CN=0.87λ3 およびループ面とグラウンド板の距離h=0.1λ3は共通です。
ここでλ3は3GHzにおける波長(=100mm)です。
図2は反射係数です。3個の周波数(2.54, 2.96, 3.60GHz)で共振しています。
図3は2番目の共振周波数(2.96GHz)での放射パターンです。ビームの中心は+Z方向になり利得は6.8dBiです。
なお、グラウンド板(と計算領域)を広げるとバックローブが小さくなり利得が上がります。

図1 アンテナ形状 (N=3, LV+LH=0.05λ3+0.20λ3=0.25λ3)
図2 反射係数 (2.2-3.8GHz, Z0=50Ω)

(a) XZ面

(b) YZ面
図3 放射パターン (2.96GHz)

図4と図5はループの巻き数N=5とN=7のときの反射係数です。
それぞれ5個と7個の周波数で共振しています。
一番外側と一番内側のループ長が共通なので第1周波数と第N周波数は変わらず、 その間にN-2個の共振周波数が発生します。


図4 反射係数 (N=5, 2.2-3.8GHz, Z0=50Ω)


図5 反射係数 (N=7, 2.2-3.8GHz, Z0=50Ω)

◆入力データ(右クリック+[保存])
Multiloop_discrete_N3.ofd, Multiloop_discrete_N5.ofd, Multiloop_discrete_N7.ofd

◆データ作成ライブラリ用ソースコード(右クリック+[保存])
Multiloop_discrete.c

(2) 修正マルチループ型

図6左のように四つ角を短絡したモデルを修正マルチループ型と呼びます。 FDTD法では斜めの線を表現しにくいので正方形のパッチで置き換えています。
参考までに右のような中心のループだけを取り出した単ループ型も考えます。
修正マルチループ型ではLV=0.06λ3、LH=0.19λ3、 単ループ型ではLV=0.04λ3、LH=0.21λ3としています。
図7は反射係数です。 図2と比べると共振周波数が一つになり、修正マルチループ型の帯域幅は単ループ型に比べて広くなっています。


(a) 修正マルチループ型
(LV+LH=0.06λ3+0.19λ3=0.25λ3)

(b) 単ループ型
(LV+LH=0.04λ3+0.21λ3=0.25λ3)
図6 アンテナ形状

(a) 修正マルチループ型

(b) 単ループ型
図7 反射係数(2.2-3.8GHz, Z0=50Ω)

◆入力データ(右クリック+[保存])
Multiloop_modified_N3.ofd, Multiloop_single.ofd

◆データ作成ライブラリ用ソースコード(右クリック+[保存])
Multiloop_modified.c

(3) 面状ループ型

図8のようにループ部を面状導体にしたモデルを面状ループ型と呼びます。
上の修正マルチループ型と同じく、 LV=0.06λ3、LH=0.19λ3としています。
図9は反射係数です。図7の修正マルチループ型と似た特性になります。


図8 アンテナ形状 (LV+LH=0.06λ3+0.19λ3=0.25λ3)


図9 反射係数 (2.2-3.8GHz, Z0=50Ω)

◆入力データ(右クリック+[保存])
Multiloop_plate.ofd

◆データ作成ライブラリ用ソースコード(右クリック+[保存])
Multiloop_plate.c


図10は離散マルチループ型(N=3)をOpenFDTDとOpenMOMで計算した結果です。両者はよく一致しています。


図10 反射係数のOpenFDTDとOpenMOMの比較 (離散マルチループ型, N=3, 2.2-3.8GHz, Z0=50Ω)